「先月と社会保険料が違う!」
給与明細を見て、そんな疑問を持ったことはありませんか?
実はこの違い、標準報酬月額の変更が影響している場合があります。この記事では、月額変更届が必要となるケース(随時改定)や、社会保険料が変わる仕組みをやさしく解説します。
月額変更届が必要となるとき
毎年7月に提出する「算定基礎届(定時決定)」によって、9月からの標準報酬月額が決まります。ですが、それ以外のタイミングでも報酬に大きな変動があった場合には「月額変更届(随時改定)」を提出する必要があります。
「月額変更届」の提出自体は事業主によって行われます。
月額変更届が必要となる条件
以下の3つの条件をすべて満たすと、月額変更届の提出対象になります。
- 固定的賃金に変動※がある
- その変動後3ヶ月間の平均報酬に、現行の標準報酬月額と2等級以上の差がある
- 対象の3ヶ月間に支給された報酬がそれぞれ支払基礎日数17日以上(正社員等の場合)
※「固定的賃金の変動」にあたるのは以下のようなケースです

月額変更届の必要の有無
固定的賃金の変動があっても、すべてのケースで月額変更届が必要になるわけではありません。もちろん2等級以上の差がなければ、たとえ固定的賃金に変動があっても月額変更届の必要はないのですが、たとえば、固定的賃金は増加しても、逆に残業手当などの非固定的賃金が大幅に減少したため、3ヶ月間の平均額が結果として2等級以上下がった場合などは、月額変更届提出の対象とはならないので注意が必要です。

月額変更届が必要(随時改定が行われる)
①固定的賃金が上がり、非固定的賃金も上がった。そして2等級以上上がった。
②固定的賃金は上がったが、非固定的賃金が下がった。結果的に2等級以上上がった。
③固定的賃金が下がり、非固定的賃金も下がった。そして2等級以上下がった。
④固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が上がった。結果的に2等級以上下がった。
月額変更届は不要(随時改定は行われない)
⑤固定的賃金は上がったが、非固定的賃金が下がった。結果的に2等級以上下がった。
⑥固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が上がった。結果的に2等級以上上がった。
「固定的賃金」と「2等級以上の差」の矢印が同じ向きの時は、月額変更届が必要になります。
標準報酬月額の改定時期と適用期間
随時改定に該当した場合、変動月から4か月目に標準報酬月額が改定されます。ただし、ここでいう「変動月」とは、昇給や降給が実際に支払われた月を指します。たとえば、昇給が1月に決まっていても、実際の給与に反映されて支払われたのが3月であれば、3月が変動月となり、6月から標準報酬月額が改定されます。
改定後の標準報酬月額は、以下の期間まで適用されます:
- 1月〜6月に改定された場合:その年の8月まで適用
- 7月〜12月に改定された場合:翌年の8月まで適用
ただし、その間に再び固定的賃金に変動があった場合は、あらためて随時改定の対象となることがあります。

まとめ:社会保険料が変わる理由を理解して不安解消!
9月に新たな標準報酬月額が適用され10月から社会保険料が変わる経験をしている人は多いかもしれませんが、その他の月に突然社会保険料が上がって驚いたという人もいるのではないでしょうか。その背景には標準報酬月額の随時改定(月額変更届)が関係しているのです。
- 固定的賃金の変更があった
- 3ヶ月平均で大きな差が出た
- 等級が2等級以上変動した
これらを満たしていれば、翌月以降の社会保険料が変わるのは自然な流れです。
不安なときは、給与明細の履歴や、標準報酬月額の等級表を確認してみましょう。